侮辱罪で在宅起訴?
ここ最近仕事がなかなか終わらないのですが、今日は久々に深夜まで事務所に残って仕事をしています。
そんな中、ふとインターネットを見ていたら、飛行機内でマスクの着用方法を注意された67歳の男性が注意した女性に向かって「コロナみたいな顔してからに」と言い放ったという事案で、男性が在宅起訴されたというニュースを目にしました。
ニュースによれば、男性は否認しているとのことですので、罪を認めていることを前提になされる略式起訴という手続をとることはできません。したがって、検察としては、不起訴処分とするか起訴するかの二者択一しか選択肢がないことになり、上記の事案では、十分な証拠があって犯罪を立証できる,男性の犯情は悪い(注意を受けたことに逆上して、他人に対して「コロナみたいな顔」って言うのは、無礼すぎますからね。)ということで起訴されたものと考えます。
上記について、侮辱罪で起訴されるのは珍しいなぁと気になって調べてみたら,今年の9月に侮辱罪の法定刑を現行の「拘留・科料」から「1年以下の懲役若しくは禁固又は30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げる刑法改正案が法務大臣に提出されていたことを知りました。上記の在宅起訴の背景にはこの厳罰化の流れも関係しているのかもしれません。
確かに、拘留(30日未満の身柄拘束)と科料(1000円以上1万円未満の財産刑)という刑罰は上限が軽すぎるように思いますので、改正には反対しませんが、個人的には、厳罰化よりも、侮辱行為によって被った精神的苦痛に対する慰謝料の金額を増額した方が侮辱行為を効果的に抑制できるのではないかと思っています。実際には,侮辱されたといって告訴しても,よほどの証拠(録音,録画、目撃者,SNS上のメッセージ等)がない限り,警察は簡単に捜査してくれないと思うからです。
現状,侮辱された場合の慰謝料額は低廉にとどまっておりますので,弁護士に依頼して民事訴訟を提起し、慰謝料の回収を図ろうとしても,弁護士費用の方が慰謝料よりも高くつくことが多いという事情があります。そのため,侮辱を受け,その確たる証拠を有していても,泣き寝入りせざるを得ないという人は相当数おられると思います。慰謝料を高額化すれば,このような泣き寝入りの事態を減らすこと,侮辱行為の抑制につながると思いますが,他方で,表現行為の委縮にもつながりかねないところなので、単純に慰謝料の高額化を図るわけにはいかないのが悩ましいところです。
実際には,侮辱行為に該当するか否かの判断が難しい表現はたくさんありますからね。
こんな風にいろいろ考えてこのブログを書いていたら、時間が思いのほか経過していたので、今日はこのへんにしときます。
2021年12月17日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:法律学