古物営業法
東京は、いつの間にか、真夏日続きになりました。日中にバイクに乗って渋滞にはまると、なかなか辛いものがあります。最近は、ありがたいことに新規の相談をたくさんいただけていて、忙しい日々を過ごしています。これまでに取扱い経験の少ない案件又は法律構成に悩む案件については、調査に時間を要するので、なかなか大変ですが、法律書や裁判例を読み解く作業は楽しく、「忙しいのに楽しい」という感覚で仕事をしています。
さて、最近、古物営業法に関する相談を受けて少し調べましたので、この法律について簡単に説明しようと思います。
古物営業法の目的は、「盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資すること」にあると定められています。要するに、中古品の売買には、盗品が含まれていたりしますので、許可なく中古品の売買を業とすることは認めないというものです。ここにいう「古物」とは、「一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」と定義されており、基本的にあらゆる中古品が含まれることになります。ちなみに、「使用されない物品で使用のために取引されたもの」とは新古品を意味し、「これらの物品に幾分の手入れをしたもの」とは修理やレストアを施したものを意味します。
ただし、古物営業の典型例は「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」、「古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。以下同じ。)を経営する営業」であり、「営業」であることがポイントです。個人がいらなくなった中古品をメルカリやヤフオクに単発的に出品して売ることは、基本的に「営業」には該当しないので、都道府県公安委員会の許可を受ける必要はないということになります。利益を得る目的(営利目的)で売買等の同種の行為を継続することが「営業」です。
ですので、中古車や中古バイク、中古ピアノ等の売買をしている業者さんは、すべからく、古物営業法が定める許可(都道府県公安委員会による許可)を得ている(得なければならない)ということになります。また、個人がヤフオクやメルカリで中古品を販売する場合であっても、利益を得る目的で継続的に行うと、それは「営業」にほかなりませんので、やはり許可が必要ということになります。
許可を得ているかどうかについて、どうやってわかるの?と疑問を抱く方がおられると思いますが、古物商は、営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならないと定められていますので、営業所に行って標識を見れば一目瞭然ということになります。逆に、営業所に標識が掲げられていなければ、怪しいということになりますね。掲示するのを忘れているだけの人もいるかもしれませんが。
上記の古物商の許可を得るには、公安委員会に対し、所定の事項を記載した許可申請書を提出する必要があります。ただし、破産手続開始決定を受けて復権を得ない者や過去に拘禁刑以上の刑に処せられたか、古物営業法第31条や刑法235条(窃盗)、刑法247条(背任)、刑法254条(遺失物等横領)等の罪によって罰金刑に処され、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者等、一定の条件に該当すると、古物商の許可を得ることができません。これらの犯罪を犯した人は、相当期間が経過していないと、信用性に欠けるということでしょう。ちなみに、執行を受けることがなくなった日とは、やや分かりにくいですが、執行猶予判決を言い渡された後にその執行猶予期間が満了した日が典型例です。
古物商の許可を得ずに、古物営業をしてしまうと、古物営業法第31条により、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処されることになるので、要注意です。
古物営業法には、ほかにも種々の規制が定められていますが(帳簿等への記載や警察による販売差し止め(古物の保管)など)、これ以上書くと、さらに長くなってしまうので、今回は簡単な説明にとどめようと思います。
もっと詳しく知りたいという方は、警察庁生活安全局長が令和6年8月14日に発した「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」を参考にするとよいと思います。
いつになるかわかりませんが、大好きな中古バイクを販売する仕事を始めようと思ったときは、ちゃんと古物商許可を得て行いたいと思います。まぁ、弁護士業を引退してからでしょうから、その日が本当にやってくるのかは微妙ですけども。
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2025年6月21日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:法律学