労働法のおすすめ本(弁護士向け)

 お盆真っ最中ですが、まだまだ暑さが厳しいですね。
この時期は、期日もあんまり入らないため、溜まった仕事(起案)に集中できたりして、けっこう落ち着いて過ごせています。

 さて、今回は、久々に労働法について書こうと思います。あいかわらず、当事務所では、労働関連事件を相当数受任しており(昔と異なるのは、労働者側
だけでなく使用者側でも担当することが増えたことです。)、その解決にあたって日々いろいろな裁判例や文献を参照しています。
 で、今回は、確か以前にこのブログで書いたことがあるのですが、実務家(弁護士)が労働事件を担当するにあたってお勧めの本を紹介できればと思っています。
というのも、前回書いたときから数年経過しており、その間にわかりやすい本がたくさん発売されたからです。
 なお、以下はあくまで私の主観でしかありませんので、あしからず。

 まず、労働事件をやる場合、疑問に思った点について、初めに手に取って確認するのは、菅野和夫教授の「労働法」(最新のものは第十一版補正版ですね。)(弘文堂)になりますね。水町勇一郎教授の「労働法」(第7版)(有斐閣)や荒木尚志教授の「労働法」(第3版)(有斐閣)、土田道夫教授の「労働契約法」(第2版)(有斐閣)といったそれなりにボリュームがあってわかりやすい基本書がいくつも刊行されていますが、いまだに菅野和夫教授の労働法が実務に与えている影響は絶大だと思います。鉄板ですね。

 次に、労働事件を(主に)使用者側の立場で多数担当されている岩出誠弁護士の「労働法実務体系」(民事法研究会)もわかりやすくて、参考になります。こちらは、裁判例の引用が豊富で調べるとっかかりになります。

 以上に加えて、山川隆一教授・渡辺弘裁判官編著の「最新裁判実務体系 労働関係訴訟Ⅰ~Ⅲ」(青林書院)、白石哲裁判官編著の「裁判実務シリーズ 労働関係訴訟の実務」(第2版)(商事法務)、佐々木宗啓裁判官ほか編著の「類型別 労働関係訴訟の実務」(青林書院)、渡辺弘裁判官著の「リーガルプログレッシブ 労働関係訴訟」(青林書院)あたりを読めば、ほとんどの事件について(知識面に限っては)解決の糸口が見えると思います。中でも、「類型別 労働関係訴訟の実務」は、事件を担当していて疑問に思う点について、Q&A方式で丁寧に解説されていて、とてもわかりやすいです。個人的には、これは名著だなと思いました。
 これらの書物は、いずれも地裁労働部勤務経験のある裁判官が主に執筆しており、学者が執筆している基本書には書かれていないような実務的な話に分量を割いて書かれていたりしますので、労働事件をやる弁護士は必読だと言っても過言ではありません。
 あと、山口幸雄裁判官ほか編著の「労働事件審理ノート」(第3版)(判例タイムズ社)もはずせませんね。これを読めば、労働事件の要件事実の基礎を勉強できます。

 以上、労働事件をこれから担当される弁護士になりたてのみなさんの参考になればと思います。なんだかんだで何冊も挙げていますが、特定の分野を調べるだけなら、さっと目を通せますので、「多すぎて読めない」ということはないと思います。
 

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2018年8月13日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:仕事 法律学

とうとう民法が大改正されますね。

 私が司法修習生だった約9年前から、「民法が大きく改正される」という話題が出ていました。しかし、その後、なかなか
内容がまとまらないのか、改正されないままに今日まで来ましたが、今日ようやく改正民法法案が参議院でも可決され、成立することになりましたね。施行がいつになるのか気になりますが、公布から3年以内らしいです。

 このような大改正があったとき、私達法曹関係者は、当然ですが、改正民法の内容を把握しなければならず、仕事の合間に勉強することになります(2,3年後の司法試験受験生も同様ですね)。
 もっとも、私は、けっこう法律の基本書を読むのが好きなので、この作業自体は全く苦ではありません。一番ネックなのは、これから発売される民法の基本書、コンメンタール等を買い足さなければいけないということですね。けっこうなお金がかかるわけで…。

 これから、しばらくは民法の解説本をたくさん読んで知識を補充していきたいと思います。ちなみに、直近で発売された書籍には、旧民法と改正民法が併記されているものもありますね。利用者のふところに優しくて嬉しい限りです。

 

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2017年5月26日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

立ちションで軽犯罪法違反?

 久々に法律問題について書いてみたいと思います。

 今日もなんだかんだで仕事したなーと思って、一息つこうとしてネットニュースを見たら、興味深い記事が目にとまりました。

 テナントビルの駐輪場で立ちションした行為について軽犯罪法違反に問われた事案について、第一審は無罪としたものの、控訴審の大阪高裁は有罪(科料9900円)判決を下したとのことでした。
 詳しい事実関係を把握していないので明言しにくいのですが、あえて人の目につくような方法・場所で堂々と立ちションしていた場合には公然わいせつ罪(刑法174条)の適用も問題になるところ、上記事案は駐輪場でこっそりとやっていたので、軽犯罪法の適用のみ問題になったのかなと推測しています。

 女性の立ちションは考え難いので(ですよね?)、今回はもっぱら男性に向けての話になります。酔っ払ってトイレに行きたくなったけど、近くにトイレがないので、お酒の勢いもあって立ちションしたという男性は実はけっこういるのではないでしょうか(社会人になると「恥ずかしい」、「みっともない」という至極もっともな感情により、シラフで立ちションする人は少ないと思います。)

 で、ここから本題ですが、上記の事件で問題となっている軽犯罪法は合計で4条しかない法律ですが、その第1条において、「拘留又は科料」の対象となる犯罪について1号から34号まで規定しています。よくよく条文を読んでみると、いろんな行為がけっこう細かく規定されていることに驚きます。
 (話が少し脱線しますが、「科料」とは「1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する財産刑」です。「罰金」も同様の財産刑ですが「1万円以上」という点で「科料」と異なります。また、「拘留」とは「1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する自由刑」です。)

 例えば、「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」(第1条4号)、「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」(第1条5号)、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」(第1条20号)も軽犯罪法違反となって拘留又は科料に処される可能性があるわけですね。最後の行為については、「しり」を露出させることはさておき、「もも」の露出も駄目なのか?と思ったりします。とはいっても、「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」での露出に限定されていますので(一体どういう仕方なのか気になりますね)、処罰の対象になる露出は相当限定されるわけでして、日常で行動する際にそんなに気にする必要はないでしょう。

 さて、立ちションについてですが、第1条26号は「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」と規定しており、上記事案はまさにこの条文の適用が問題になったようです。
 立ちションした場所がテナントビルの駐輪場だったとのことですが、その駐輪場が「公衆の集合する場所」にあたるかどうかが問題になったところ、第一審も控訴審も駐輪場の狭さ等から「公衆の集合する場所にあたらない」と判断したようです。
 そうすると、無罪という結論になりそうなのですが、控訴審は「(今回の裁判で問題となっている)駐輪場は歩道に面していて段差もないので『街路』にあたる」と結論づけ、有罪という判決に至ったようです。

 いずれにせよ、立ちションは当然として、たんつばを吐く行為も軽犯罪法に触れる可能性があるということを覚えておいた方がよいと思います。
 また、軽犯罪法の第3条は「第1条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。」と規定しており、例えば、他人に街路・公園等の場所で立ちションするように唆したり、その立ちションを手助けすることも処罰の対象になりうることを知っておくべきですね(そんなことする人はレアだと思いますが)。

 ちなみに、軽犯罪法違反で逮捕されたという話を私はあまり聞いたことがありません。おそらく、軽犯罪法第4条が「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定しているためだと思います。

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2017年2月8日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

強姦罪、強姦致傷罪について

 最近、有名な俳優さんが強姦致傷罪で逮捕されたとのニュースが世間を賑わしています。
近年、裁判員裁判が始まって以降、総じて厳罰化の傾向にある(従前と比べて量刑が重い)といえますが、
特に、強姦や強制わいせつ等の罪については、量刑が重くなっていると感じられます。

 強姦致傷罪については、刑法182条は「177条(強姦罪)もしくは178条第2項の罪(準強姦罪)またはこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は5年以上の懲役に処される」と規定しています。
 簡単に説明すると、本条は、強姦しようとして、その際に被害者に傷害を負わせた場合を規定するもので(姦淫が成功したかどうかに関係なく成立します。)、刑法177条が「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処される。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」と定め、刑法178条2項が「女子の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条(強姦罪)の例による。」と定めていることと比べると、法定刑が重くなっていることがわかりますね。
 後述の通り、強姦致傷罪は、被害者の性的自由を侵害したのみならず、その身体も侵害している点で罪が重くなっているわけです。

 強姦罪の保護法益(法が一定の行為を規制することで保護しようとしている利益)は、個人の性的自由でありますが、被害者の尊厳を著しく害するという側面がありますので(実際、被害者は、その後にPTSDに悩まされたり男性恐怖症になったりりすることがあり、その被害は大変大きいといえます。)、初犯であっても実刑判決が下ることが多いです。
 特に、強姦致傷罪については、裁判員裁判対象事件であり、動機や犯行態様等の点、一般情状(加害者の境遇、反省の度合い、被害弁償の有無等)の点はさておいて、厳しい判決が下ります。


 ここで、強姦罪、強姦致傷罪について専門的な話を少ししたいと思います。
強姦罪は、「暴行又は脅迫を用いて13以上の女子を姦淫したこと」、又は、「(暴行又は脅迫を用いなくても)13歳未満の女子を姦淫したこと」で成立します。そのため、被害者が13歳以上であった場合、被害者の意思に反する性交であっても、暴行又は脅迫を用いていなければ強姦罪は成立しません(そのような場合はあまり想定しがたいですけども。)。
 なお、暴行又は脅迫を用いなくても、被害者を心神喪失の状態にさせて、又は、被害者が心神喪失状態、抗拒不能状態にあることに乗じて姦淫した場合には準強姦罪(刑法178条2項)が成立します。例えば、女性がお酒によって寝ていた際に姦淫した場合なんかは準強姦罪となります。昔、大学サークルの飲み会で女性にしこたま酒を飲ませて意識を失わせた後に姦淫していたという事件があり、準強姦罪で実刑判決が出たことを覚えている人は多いと思います。
 

 次に、強姦罪、強姦致傷罪は被害者が女性に限定されており、被害者が男性の場合には強姦罪、強姦致傷罪は成立せず、強制わいせつ罪、強制わいせつ致傷罪が成立するにとどまります。
 では、被害者がいわゆる性転換手術をして、戸籍上も「女性」となった人(元男性)だった場合はどうか?という問題がありますが、私は、戸籍上「女性」であっても、罪刑法定主義の原則から、強姦罪は成立せず、強制わいせつ罪が成立するにとどまると考えます。この点は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し、刑法成立当時とは時代背景も異なっていますので、今後は刑法の規定改正もありうると考えています。

 それから、夫婦関係・内縁関係にある男女間でも強姦罪が成立するか?という争点があります。昔、夫は妻に対して性交を要求する権利があるので、夫婦間では強姦罪は成立せず、暴行罪、脅迫罪が成立するにとどまると主張する見解がありましたが、現在では、成立を認める見解が有力です。

 最後に、「SMプレーの一環として、13歳以上の女性相手に暴行、脅迫して姦淫したらどうなるの?」という疑問をもつ人がいるかもしれませんが、この場合は被害者の承諾があるので(男女双方の合意による「プレー」なので)、強姦罪は成立しません。

 以上、久々に法律についての解説を書いてみました。長くなったので、今日はこのへんで。

 


 

 
 
 

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2016年8月25日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

賭博罪について

 最近、スポーツ界の選手が賭博をやっていたことが問題となっていますね。
ということで、今日は、賭博罪について記事を書きたいと思います。
 
 これまで刑事弁護をやってきた中で、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反といった薬物事案、迷惑防止条例違反・強制わいせつ等のわいせつ事案、窃盗、詐欺、横領(占有離脱物横領含む)などの財産犯事案、暴行・傷害・脅迫・恐喝といった粗暴犯の事案はよく担当しましたが、賭博罪の事案は、実は1件しか担当したことがありません。

 賭博罪で逮捕されるというのは珍しいという印象です。おそらく、立件するのが難しい上に、その必要性も低いからではないか(詳しくは下記で説明しますが、単純賭博の法定刑は「50万円以下の罰金又は科料」で軽いといえます。)と勝手に思っているんですけど、実際はどうなんでしょうね。

 賭博罪については、刑法185条と186条が規定しています。
185条は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。」と定め、186条は、第1項で「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」、第2項で「賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」と定めています。

 そもそも、賭博を罰する必要があるのかという根本的な疑問を有する方がいらっしゃると思いますが(自分の財産を自由に使ってよいはずで、当事者が納得しているなら賭け事も問題ないという考えですね。)、賭博罪の保護法益は「国民一般の健全な勤労観念、国民経済」という公益だと解するのが判例・多数説で、そうなると、賭博を行う個人の意思がどうであれ、罰せられるというわけです。
 もう少し丁寧に説明すると、「偶然の事情によって財物を得ようとして争うことは、怠惰浪費の風潮を生じさせ、勤労の美風を害する」という理屈づけです。でも、これには、本当にそう言い切れるのかという疑問があり、上記のような異論が出されてもおかしくなく、数年~数十年後には、賭博罪の規定が改正、廃止される可能性がなきにしもあらずと思っています。

 で、ここからは、上記の条文について(一般市民の方が関わりそうな単純賭博罪について)解説していきます。
まず、「賭博」とは、いわゆる「賭け事」を指し、ちょっと丁寧に説明すると「偶然の事情に対して、財物をかけて勝敗を争うこと」という内容になります。
 野球賭博、サッカー賭博についていえば、野球やサッカーの勝敗の結果は、賭博の当事者が左右し得ない偶然の事情によりますよね。だから、「賭博」にあたります。

 では、賭け麻雀はどうか?というと、これも賭博にあたると一般的に解されています。麻雀は、当事者の技量によって勝敗が決する側面があるものの、それだけではなく、偶然が介入する余地があるからです。
 う~ん、怖いですね(笑)。ということで、麻雀やるのは自由ですが、賭け麻雀は控えましょうということになります。
(実際には、お金を賭けずに麻雀やっている人はむしろ超少数といえるんでしょうが、これは、国もわかっているので、麻雀店で賭け麻雀やってても、滅多に検挙されないんじゃないか(いわゆる「お目こぼし」というやつです。)と思っています。)。

 次に、185条は「一時の娯楽に供する物を賭けた場合」には罰しない旨定めていますが、この「一時の娯楽に供する物」とは何を指すかと問われると、即答できる人は少ないのではないかと思います。
 「一時の娯楽に供する物」にあたるかどうかは、財物の僅少性と費消の即時性という2つの要素を考慮して判断される傾向にあります。
 例えば、安いスナック菓子なんかは「一時の娯楽に供する物」にあたると言われています。

 では、少額のお金は「一時の娯楽に供する物」にあたるのか?と問われると、ここは、学者の間で見解が分かれているようです。裁判例は、「お金は、その性質上、一時の娯楽に供する物に当たらない」と捉える傾向にあるようですが、学者さんの多くは、理由付けはどうあれ、単純賭博罪の成立を否定するようです。

 最近よくある、飲み代を賭けた男気じゃんけん(買った人がみんなの飲み代を払うというもの)についてはどうでしょうか?「じゃんけん」という勝敗結果に偶然が介入する事情に、お金を賭けているわけですけども、そのお金は、その場の飲食代金に充当されることが明確に予定されていて、実質的には「どこかのお店で買ってきた飲食物を賭けた場合」と同様に捉えられるので、「一時の娯楽に供する物」といえるのではないでしょうか。結論的にもこのように解するのが妥当と思いますが、私の勝手な意見にすぎませんので、あしからず。

 最後に、185条の単純賭博と比較して、186条の法定刑は重くなっています。特に、186条2項の賭博場開帳等図利罪は、賭博行為を助長するからという理由で、一気に法定刑が重くなっていますね。
 闇カジノ店、闇スロット店などを主宰(開設)していると、186条2項に該当すると思われます。闇カジノや闇スロット店は、六本木や新宿といった繁華街に存在すると言われていますが、善良な市民の皆様は立ち入らないようにするのが賢明でしょうね。

 ちょっと長くなったので、今日はこのへんで。



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2016年5月1日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

結婚詐欺とは?

 約半年ぶりの更新になります。事務所の法人化、大阪事務所の開設等で昨年度は忙しなく動いていましたが、今年は昨年よりもゆっくり過ごせそうな感があります。

 ということで、久々にブログを更新しようと思い、何について書こうかなと思っていたところで、最近、結婚詐欺で逮捕された女性のニュースをみかけましたので、その話題に触れたいと思います。なお、細かい点に言及すると話が長くなるので、以下ではざっくりとした記載にしておきます。

 もともと、男女間では「将来的に結婚しようね。」、「○○と結婚することしか考えていない。」等という話が出るのはよくあることで(と独断で思っています。)、これを反故にしたからといって全てが詐欺になるわけではありません。

 刑法246条は「人を欺いて財物を交付させた場合」、「人を欺いて財産上の利益を得、又は他人にこれを得させた場合」に詐欺罪が成立すると定めています。
 ここでポイントなのは、詐欺罪が成立するには、1・人を欺いて、2・人に錯誤を生じさせ、3・その錯誤に基づいて財物・財産上の利益を交付させる、という要件を満たす必要があることです(なお、詐欺未遂罪の成否については話が長くなるので述べません。)。
 すなわち、結婚する気がないのに結婚すると嘘を言っただけでは、3の要件を満たさないので詐欺罪は成立しません。また、「当初結婚する気があったけども、途中で気持ちに変化があり、結婚をお断りした」というのであれば、これは欺く行為がないので1の要件を満たさず、やはり詐欺罪は成立しません。
 さらに、結婚する気がないのに結婚すると嘘を言い、結婚してくれるものと誤解した相手方にいろいろと奢ってもらったりしても詐欺罪が成立するわけではありません。1の欺く行為が相手方の財物・財産上の利益の交付行為に向けられていないからです(ここはちょっとわかりにくいかもしれませんね。)

 結婚詐欺がいわゆる「詐欺罪」に該当するには、財物・財産上の利益を得るために結婚するという嘘をついて、相手方を誤信させ、相手方から財物・財産上の利益を交付させることが必要になります。そして、これらの事項を立証できる証拠がどれだけあるかが極めて重要になりますね。

 今回ニュースになっている案件では、報道内容が正しいとすれば、結婚する気がないのに「結婚して二人で住むための家のリフォーム費用として必要」という嘘をついて(欺く行為が相手方にお金を交付させる行為に向けられています。)、相手方に錯誤を生じさせ(相手方は、結婚するのに必要と誤解していた。)、相手方から実際にお金を受け取っているので、詐欺罪に該当し得るわけです。

 一般的には、1の欺く行為があったか否かの証明が難しいのですが、LINE(ライン)やメールの履歴は客観的な証拠として重要でしょう。

 

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2016年3月6日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:仕事 法律学

民法案内1がけっこう奥深い

 2日連続で、関西、中部に出張しており、明日は千葉本庁、木更津支部と移動が続きます。移動ばかりというのもけっこう疲れますね。

 さて、法律家の間では、「我妻榮」という名前を知らない人がいないと思います。我妻榮先生は、元東大教授で、民法の大家と言われる方。そんな我妻先生の著書である「民法案内」をずっと読んでみたいと思いながら、「でも、もうすぐ民法改正するしなぁ。」というケチな根性もあり、これまで買わずにいました。

 でも、民法案内を補訂していた川井健先生もお亡くなりになり、「今買わないと一生読まないかも」と考え、この度、「民法案内1 私法の道しるべ」(勁草書房)を購入しました。民法案内1は、「私法の道しるべ」というタイトルが示すように、民法の個別具体的な論点について解説したものではなく、「なぜ定義が必要か」といったもっと根本的な考え方の説明や私法の基本原理について説明したものです。
 で、これがなかなか奥深くて面白いんですね。初めて読んだんですが、もっと前に読んでおければと後悔するくらい(笑)。

 法学を学んだことのない初学者が読むと、その良さにあまり気づかないかもしれませんが、予備校や大学でひと通り基本六法を学んだくらいの段階で読むと、きっと新たな発見があると思います。

 ということで、民法案内1を読み終えたら、民法案内2、3と頑張って読破していきたいと思います。

 

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2014年10月27日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

憲法のオススメ本

最近、憲法の基本書をよく読んでます。王道は、やはり芦部憲法だと思いますが、痒い所に手が届く感があるのは高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」(有斐閣)です。
通説とは異なる見解に立たれている箇所がいくつかありますが、非常に分かりやすく論じられていて読みやすいと思います。今後は、この本が司法試験、ロースクール入試、公務員試験対策の基本書としてメジャーになる予感がします。
統治機構の部分をもう少し詳しく書いてあれば嬉しいんですが‥(あと100頁くらい増量して欲しいですね。)




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2012年5月8日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

ロースクール入試、公務員試験対策(行政法論文)

今回は、ロースクール入試、公務員試験対策、さらには司法試験対策としてオススメの行政法の基本書、演習書等を紹介したいと思います。

あらゆる試験に幅広く対応できる基本書は、櫻井先生、橋本先生が執筆されている「行政法」(弘文堂)で決まりでしょう。文体が平易で分かりやすく独学にもピッタリです。これと、判例集、あとから紹介する演習書でほぼ対応できると言っても過言ではありません。他には、一冊で総論、救済法を網羅するものとして原田尚彦先生の「行政法要論」(学陽書房)も定番で外せないですね。櫻井先生、橋本先生執筆の上記基本書に比べると全体的に表現はカタいですけど。
個人的には、どちらか選ぶなら、櫻井先生、橋本先生の本を選びます。

で、上記の本で物足りないと考える人は、塩野宏先生の「行政法I」、「行政法Ⅱ」(有斐閣)、芝池先生の「行政法総論講義」、「行政救済法講義」(有斐閣)、宇賀克也先生の「行政法概説」(有斐閣)あたりから選ぶことになると思いますが、僕のイチオシは芝池先生の基本書ですね。どれを選んでも大差ないですが、塩野先生の本は文体が格調高く、じっくり腰を据えてやる人以外には向かないかなと。あとは、宇賀克也先生の基本書よりも芝池先生の基本書の方が理論的な説明は厚くなされてるように思います。

なお、司法試験受験生以外なら、一冊にまとまってる基本書を選んで何度も読み返し、全体像をイメージできれば十分です。

演習書については、日本評論社から出てる「事例研究 行政法」第2版がベストです。他の演習書よりも解説がダントツで分かりやすいですね。これに比べて、「行政法 事案解析の作法」(日本評論社)は解説が細かくて、読みにくく感じますし、同じく日本評論社から出てる「ケースメソッド公法」(憲法も含まれています)は、最終的な結論がはっきり記載されてない箇所が多くて歯痒い感じです。あと、月刊「法学教室」(有斐閣)掲載の演習もけっこう使えます。
ロースクール、公務員受験生だと、国家総合職狙いの人はアレコレと手を広げずに「事例研究 行政法」だけやれば十分です。

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2011年11月23日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

刑法の基本書~司法試験対策、公務員試験対策~

久々に資格試験受験生向けにオススメ基本書を紹介したいと思います。あくまで私の独断ですが‥。

まず、国家公務員総合職(国家I種)試験であれば、刑法は択一試験しかありませんので、刑法の勉強に時間をかけるのは得策ではありません。そこで、1冊で通説、判例の立場を概観出来る基本書がいいと思います。やや古いですが、刑法の大御所である大塚仁先生の「刑法入門」(有斐閣)が分かりやすくてよいですね。増刷の度にこまめに補訂されてますし。あとは、山口厚先生の「刑法」(有斐閣)も1冊でよくまとまっています。でも、山口先生の本は、大塚先生の本よりも難しく、語り口調ではないので、独学でマスターするのはやや難しいかもしれません。また、分量も大塚先生の本よりも100ページ以上多いので、通読には時間がかかります。公務員試験の択一対策はとにかく早く、一気にインプットを完了した上で過去問を解くのが効果的ですので、薄めの本を選ぶのがいいです。もちろん予備校に通っている人はその予備校のテキストをおさえておけばインプットは足りると思います。

次に司法試験対策、法科大学院入試対策ですが、上記の基本書ではインプットが足りません。ここは、刑法総論、刑法各論の2分冊を使わざるを得ないでしょう。いわゆる行為無価値、結果無価値で大きく分かれますが、どちらの立場に立ってもいいでしょう。行為無価値の人は、刑法総論は「刑法総論講義案」(司法協会)が一番無難だと思います。学者の先生方からは、理論的な甘さを批判されることが多い本ですが、司法試験の事例問題を解くにあたって差がつくようなものではないでしょう。各論は、川端博先生の「刑法各論講義」(成文堂)が詳しくて理論的にも分かりやすく、オススメします。なお、川端博先生の「刑法講義総論」(成文堂)もあり、こちらも総論の教科書の中では悪くないと思います。個人的には、行為無価値であれば、斎藤信治先生の「刑法総論」、「刑法各論」(有斐閣)が面白くて大好きです。「社会心理的衝撃性」という新たな概念を用いておられ、ちょっと通説と異なる立場ですけどね。他には、井田良先生の基本書が最近人気みたいですが、こちらは通読していないので、何とも言えません。

結果無価値の人は、山口厚先生の「刑法総論」、「刑法各論」(有斐閣)を外せないのではないでしょうか。ただ、刑法総論はかなり難しく感じると思います。あと、松宮孝明先生の「刑法総論講義」、「刑法各論講義」(成文堂)も難解ですが、読んでいて面白いですね。しかし、司法試験向きとは言えないかもしれませんが。残すは、最近メジャーな西田典之先生の「刑法総論」、「刑法各論」(弘文堂)となるんでしょうが、実は私、この本を通読していないので何とも言えません。というわけで、結果無価値の基本書では、これといった決め手をご紹介することが今のところできません。ごめんなさい_| ̄|○

行為無価値であろうが、結果無価値であろうが、論文対策が重要なのは間違いなく、どの学説に立ったからといって点差が出るようなことはないと思います。ロースクールの先生の学説に近い本を選んでおけば間違いないし、混乱もしないのではと思います。

注意すべきは、いろんな基本書をつまみ食い的に利用することですね。これはタブーです。刑法(特に総論)は論理的思考が最も問われる法律科目ですので、一貫した記述をすることが必要です。いろんな学説をごちゃ混ぜにしないよう気をつけましょう。

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2011年11月5日 | コメント/トラックバック(0) |

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