強姦罪、強姦致傷罪について

 最近、有名な俳優さんが強姦致傷罪で逮捕されたとのニュースが世間を賑わしています。
近年、裁判員裁判が始まって以降、総じて厳罰化の傾向にある(従前と比べて量刑が重い)といえますが、
特に、強姦や強制わいせつ等の罪については、量刑が重くなっていると感じられます。

 強姦致傷罪については、刑法182条は「177条(強姦罪)もしくは178条第2項の罪(準強姦罪)またはこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は5年以上の懲役に処される」と規定しています。
 簡単に説明すると、本条は、強姦しようとして、その際に被害者に傷害を負わせた場合を規定するもので(姦淫が成功したかどうかに関係なく成立します。)、刑法177条が「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処される。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」と定め、刑法178条2項が「女子の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条(強姦罪)の例による。」と定めていることと比べると、法定刑が重くなっていることがわかりますね。
 後述の通り、強姦致傷罪は、被害者の性的自由を侵害したのみならず、その身体も侵害している点で罪が重くなっているわけです。

 強姦罪の保護法益(法が一定の行為を規制することで保護しようとしている利益)は、個人の性的自由でありますが、被害者の尊厳を著しく害するという側面がありますので(実際、被害者は、その後にPTSDに悩まされたり男性恐怖症になったりりすることがあり、その被害は大変大きいといえます。)、初犯であっても実刑判決が下ることが多いです。
 特に、強姦致傷罪については、裁判員裁判対象事件であり、動機や犯行態様等の点、一般情状(加害者の境遇、反省の度合い、被害弁償の有無等)の点はさておいて、厳しい判決が下ります。


 ここで、強姦罪、強姦致傷罪について専門的な話を少ししたいと思います。
強姦罪は、「暴行又は脅迫を用いて13以上の女子を姦淫したこと」、又は、「(暴行又は脅迫を用いなくても)13歳未満の女子を姦淫したこと」で成立します。そのため、被害者が13歳以上であった場合、被害者の意思に反する性交であっても、暴行又は脅迫を用いていなければ強姦罪は成立しません(そのような場合はあまり想定しがたいですけども。)。
 なお、暴行又は脅迫を用いなくても、被害者を心神喪失の状態にさせて、又は、被害者が心神喪失状態、抗拒不能状態にあることに乗じて姦淫した場合には準強姦罪(刑法178条2項)が成立します。例えば、女性がお酒によって寝ていた際に姦淫した場合なんかは準強姦罪となります。昔、大学サークルの飲み会で女性にしこたま酒を飲ませて意識を失わせた後に姦淫していたという事件があり、準強姦罪で実刑判決が出たことを覚えている人は多いと思います。
 

 次に、強姦罪、強姦致傷罪は被害者が女性に限定されており、被害者が男性の場合には強姦罪、強姦致傷罪は成立せず、強制わいせつ罪、強制わいせつ致傷罪が成立するにとどまります。
 では、被害者がいわゆる性転換手術をして、戸籍上も「女性」となった人(元男性)だった場合はどうか?という問題がありますが、私は、戸籍上「女性」であっても、罪刑法定主義の原則から、強姦罪は成立せず、強制わいせつ罪が成立するにとどまると考えます。この点は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し、刑法成立当時とは時代背景も異なっていますので、今後は刑法の規定改正もありうると考えています。

 それから、夫婦関係・内縁関係にある男女間でも強姦罪が成立するか?という争点があります。昔、夫は妻に対して性交を要求する権利があるので、夫婦間では強姦罪は成立せず、暴行罪、脅迫罪が成立するにとどまると主張する見解がありましたが、現在では、成立を認める見解が有力です。

 最後に、「SMプレーの一環として、13歳以上の女性相手に暴行、脅迫して姦淫したらどうなるの?」という疑問をもつ人がいるかもしれませんが、この場合は被害者の承諾があるので(男女双方の合意による「プレー」なので)、強姦罪は成立しません。

 以上、久々に法律についての解説を書いてみました。長くなったので、今日はこのへんで。

 


 

 
 
 

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2016年8月25日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

賭博罪について

 最近、スポーツ界の選手が賭博をやっていたことが問題となっていますね。
ということで、今日は、賭博罪について記事を書きたいと思います。
 
 これまで刑事弁護をやってきた中で、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反といった薬物事案、迷惑防止条例違反・強制わいせつ等のわいせつ事案、窃盗、詐欺、横領(占有離脱物横領含む)などの財産犯事案、暴行・傷害・脅迫・恐喝といった粗暴犯の事案はよく担当しましたが、賭博罪の事案は、実は1件しか担当したことがありません。

 賭博罪で逮捕されるというのは珍しいという印象です。おそらく、立件するのが難しい上に、その必要性も低いからではないか(詳しくは下記で説明しますが、単純賭博の法定刑は「50万円以下の罰金又は科料」で軽いといえます。)と勝手に思っているんですけど、実際はどうなんでしょうね。

 賭博罪については、刑法185条と186条が規定しています。
185条は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。」と定め、186条は、第1項で「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」、第2項で「賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」と定めています。

 そもそも、賭博を罰する必要があるのかという根本的な疑問を有する方がいらっしゃると思いますが(自分の財産を自由に使ってよいはずで、当事者が納得しているなら賭け事も問題ないという考えですね。)、賭博罪の保護法益は「国民一般の健全な勤労観念、国民経済」という公益だと解するのが判例・多数説で、そうなると、賭博を行う個人の意思がどうであれ、罰せられるというわけです。
 もう少し丁寧に説明すると、「偶然の事情によって財物を得ようとして争うことは、怠惰浪費の風潮を生じさせ、勤労の美風を害する」という理屈づけです。でも、これには、本当にそう言い切れるのかという疑問があり、上記のような異論が出されてもおかしくなく、数年~数十年後には、賭博罪の規定が改正、廃止される可能性がなきにしもあらずと思っています。

 で、ここからは、上記の条文について(一般市民の方が関わりそうな単純賭博罪について)解説していきます。
まず、「賭博」とは、いわゆる「賭け事」を指し、ちょっと丁寧に説明すると「偶然の事情に対して、財物をかけて勝敗を争うこと」という内容になります。
 野球賭博、サッカー賭博についていえば、野球やサッカーの勝敗の結果は、賭博の当事者が左右し得ない偶然の事情によりますよね。だから、「賭博」にあたります。

 では、賭け麻雀はどうか?というと、これも賭博にあたると一般的に解されています。麻雀は、当事者の技量によって勝敗が決する側面があるものの、それだけではなく、偶然が介入する余地があるからです。
 う~ん、怖いですね(笑)。ということで、麻雀やるのは自由ですが、賭け麻雀は控えましょうということになります。
(実際には、お金を賭けずに麻雀やっている人はむしろ超少数といえるんでしょうが、これは、国もわかっているので、麻雀店で賭け麻雀やってても、滅多に検挙されないんじゃないか(いわゆる「お目こぼし」というやつです。)と思っています。)。

 次に、185条は「一時の娯楽に供する物を賭けた場合」には罰しない旨定めていますが、この「一時の娯楽に供する物」とは何を指すかと問われると、即答できる人は少ないのではないかと思います。
 「一時の娯楽に供する物」にあたるかどうかは、財物の僅少性と費消の即時性という2つの要素を考慮して判断される傾向にあります。
 例えば、安いスナック菓子なんかは「一時の娯楽に供する物」にあたると言われています。

 では、少額のお金は「一時の娯楽に供する物」にあたるのか?と問われると、ここは、学者の間で見解が分かれているようです。裁判例は、「お金は、その性質上、一時の娯楽に供する物に当たらない」と捉える傾向にあるようですが、学者さんの多くは、理由付けはどうあれ、単純賭博罪の成立を否定するようです。

 最近よくある、飲み代を賭けた男気じゃんけん(買った人がみんなの飲み代を払うというもの)についてはどうでしょうか?「じゃんけん」という勝敗結果に偶然が介入する事情に、お金を賭けているわけですけども、そのお金は、その場の飲食代金に充当されることが明確に予定されていて、実質的には「どこかのお店で買ってきた飲食物を賭けた場合」と同様に捉えられるので、「一時の娯楽に供する物」といえるのではないでしょうか。結論的にもこのように解するのが妥当と思いますが、私の勝手な意見にすぎませんので、あしからず。

 最後に、185条の単純賭博と比較して、186条の法定刑は重くなっています。特に、186条2項の賭博場開帳等図利罪は、賭博行為を助長するからという理由で、一気に法定刑が重くなっていますね。
 闇カジノ店、闇スロット店などを主宰(開設)していると、186条2項に該当すると思われます。闇カジノや闇スロット店は、六本木や新宿といった繁華街に存在すると言われていますが、善良な市民の皆様は立ち入らないようにするのが賢明でしょうね。

 ちょっと長くなったので、今日はこのへんで。



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2016年5月1日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

結婚詐欺とは?

 約半年ぶりの更新になります。事務所の法人化、大阪事務所の開設等で昨年度は忙しなく動いていましたが、今年は昨年よりもゆっくり過ごせそうな感があります。

 ということで、久々にブログを更新しようと思い、何について書こうかなと思っていたところで、最近、結婚詐欺で逮捕された女性のニュースをみかけましたので、その話題に触れたいと思います。なお、細かい点に言及すると話が長くなるので、以下ではざっくりとした記載にしておきます。

 もともと、男女間では「将来的に結婚しようね。」、「○○と結婚することしか考えていない。」等という話が出るのはよくあることで(と独断で思っています。)、これを反故にしたからといって全てが詐欺になるわけではありません。

 刑法246条は「人を欺いて財物を交付させた場合」、「人を欺いて財産上の利益を得、又は他人にこれを得させた場合」に詐欺罪が成立すると定めています。
 ここでポイントなのは、詐欺罪が成立するには、1・人を欺いて、2・人に錯誤を生じさせ、3・その錯誤に基づいて財物・財産上の利益を交付させる、という要件を満たす必要があることです(なお、詐欺未遂罪の成否については話が長くなるので述べません。)。
 すなわち、結婚する気がないのに結婚すると嘘を言っただけでは、3の要件を満たさないので詐欺罪は成立しません。また、「当初結婚する気があったけども、途中で気持ちに変化があり、結婚をお断りした」というのであれば、これは欺く行為がないので1の要件を満たさず、やはり詐欺罪は成立しません。
 さらに、結婚する気がないのに結婚すると嘘を言い、結婚してくれるものと誤解した相手方にいろいろと奢ってもらったりしても詐欺罪が成立するわけではありません。1の欺く行為が相手方の財物・財産上の利益の交付行為に向けられていないからです(ここはちょっとわかりにくいかもしれませんね。)

 結婚詐欺がいわゆる「詐欺罪」に該当するには、財物・財産上の利益を得るために結婚するという嘘をついて、相手方を誤信させ、相手方から財物・財産上の利益を交付させることが必要になります。そして、これらの事項を立証できる証拠がどれだけあるかが極めて重要になりますね。

 今回ニュースになっている案件では、報道内容が正しいとすれば、結婚する気がないのに「結婚して二人で住むための家のリフォーム費用として必要」という嘘をついて(欺く行為が相手方にお金を交付させる行為に向けられています。)、相手方に錯誤を生じさせ(相手方は、結婚するのに必要と誤解していた。)、相手方から実際にお金を受け取っているので、詐欺罪に該当し得るわけです。

 一般的には、1の欺く行為があったか否かの証明が難しいのですが、LINE(ライン)やメールの履歴は客観的な証拠として重要でしょう。

 

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2016年3月6日 | コメント/トラックバック(0) |

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民法案内1がけっこう奥深い

 2日連続で、関西、中部に出張しており、明日は千葉本庁、木更津支部と移動が続きます。移動ばかりというのもけっこう疲れますね。

 さて、法律家の間では、「我妻榮」という名前を知らない人がいないと思います。我妻榮先生は、元東大教授で、民法の大家と言われる方。そんな我妻先生の著書である「民法案内」をずっと読んでみたいと思いながら、「でも、もうすぐ民法改正するしなぁ。」というケチな根性もあり、これまで買わずにいました。

 でも、民法案内を補訂していた川井健先生もお亡くなりになり、「今買わないと一生読まないかも」と考え、この度、「民法案内1 私法の道しるべ」(勁草書房)を購入しました。民法案内1は、「私法の道しるべ」というタイトルが示すように、民法の個別具体的な論点について解説したものではなく、「なぜ定義が必要か」といったもっと根本的な考え方の説明や私法の基本原理について説明したものです。
 で、これがなかなか奥深くて面白いんですね。初めて読んだんですが、もっと前に読んでおければと後悔するくらい(笑)。

 法学を学んだことのない初学者が読むと、その良さにあまり気づかないかもしれませんが、予備校や大学でひと通り基本六法を学んだくらいの段階で読むと、きっと新たな発見があると思います。

 ということで、民法案内1を読み終えたら、民法案内2、3と頑張って読破していきたいと思います。

 

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2014年10月27日 | コメント/トラックバック(0) |

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憲法のオススメ本

最近、憲法の基本書をよく読んでます。王道は、やはり芦部憲法だと思いますが、痒い所に手が届く感があるのは高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」(有斐閣)です。
通説とは異なる見解に立たれている箇所がいくつかありますが、非常に分かりやすく論じられていて読みやすいと思います。今後は、この本が司法試験、ロースクール入試、公務員試験対策の基本書としてメジャーになる予感がします。
統治機構の部分をもう少し詳しく書いてあれば嬉しいんですが‥(あと100頁くらい増量して欲しいですね。)




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2012年5月8日 | コメント/トラックバック(0) |

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ロースクール入試、公務員試験対策(行政法論文)

今回は、ロースクール入試、公務員試験対策、さらには司法試験対策としてオススメの行政法の基本書、演習書等を紹介したいと思います。

あらゆる試験に幅広く対応できる基本書は、櫻井先生、橋本先生が執筆されている「行政法」(弘文堂)で決まりでしょう。文体が平易で分かりやすく独学にもピッタリです。これと、判例集、あとから紹介する演習書でほぼ対応できると言っても過言ではありません。他には、一冊で総論、救済法を網羅するものとして原田尚彦先生の「行政法要論」(学陽書房)も定番で外せないですね。櫻井先生、橋本先生執筆の上記基本書に比べると全体的に表現はカタいですけど。
個人的には、どちらか選ぶなら、櫻井先生、橋本先生の本を選びます。

で、上記の本で物足りないと考える人は、塩野宏先生の「行政法I」、「行政法Ⅱ」(有斐閣)、芝池先生の「行政法総論講義」、「行政救済法講義」(有斐閣)、宇賀克也先生の「行政法概説」(有斐閣)あたりから選ぶことになると思いますが、僕のイチオシは芝池先生の基本書ですね。どれを選んでも大差ないですが、塩野先生の本は文体が格調高く、じっくり腰を据えてやる人以外には向かないかなと。あとは、宇賀克也先生の基本書よりも芝池先生の基本書の方が理論的な説明は厚くなされてるように思います。

なお、司法試験受験生以外なら、一冊にまとまってる基本書を選んで何度も読み返し、全体像をイメージできれば十分です。

演習書については、日本評論社から出てる「事例研究 行政法」第2版がベストです。他の演習書よりも解説がダントツで分かりやすいですね。これに比べて、「行政法 事案解析の作法」(日本評論社)は解説が細かくて、読みにくく感じますし、同じく日本評論社から出てる「ケースメソッド公法」(憲法も含まれています)は、最終的な結論がはっきり記載されてない箇所が多くて歯痒い感じです。あと、月刊「法学教室」(有斐閣)掲載の演習もけっこう使えます。
ロースクール、公務員受験生だと、国家総合職狙いの人はアレコレと手を広げずに「事例研究 行政法」だけやれば十分です。

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2011年11月23日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:法律学

刑法の基本書~司法試験対策、公務員試験対策~

久々に資格試験受験生向けにオススメ基本書を紹介したいと思います。あくまで私の独断ですが‥。

まず、国家公務員総合職(国家I種)試験であれば、刑法は択一試験しかありませんので、刑法の勉強に時間をかけるのは得策ではありません。そこで、1冊で通説、判例の立場を概観出来る基本書がいいと思います。やや古いですが、刑法の大御所である大塚仁先生の「刑法入門」(有斐閣)が分かりやすくてよいですね。増刷の度にこまめに補訂されてますし。あとは、山口厚先生の「刑法」(有斐閣)も1冊でよくまとまっています。でも、山口先生の本は、大塚先生の本よりも難しく、語り口調ではないので、独学でマスターするのはやや難しいかもしれません。また、分量も大塚先生の本よりも100ページ以上多いので、通読には時間がかかります。公務員試験の択一対策はとにかく早く、一気にインプットを完了した上で過去問を解くのが効果的ですので、薄めの本を選ぶのがいいです。もちろん予備校に通っている人はその予備校のテキストをおさえておけばインプットは足りると思います。

次に司法試験対策、法科大学院入試対策ですが、上記の基本書ではインプットが足りません。ここは、刑法総論、刑法各論の2分冊を使わざるを得ないでしょう。いわゆる行為無価値、結果無価値で大きく分かれますが、どちらの立場に立ってもいいでしょう。行為無価値の人は、刑法総論は「刑法総論講義案」(司法協会)が一番無難だと思います。学者の先生方からは、理論的な甘さを批判されることが多い本ですが、司法試験の事例問題を解くにあたって差がつくようなものではないでしょう。各論は、川端博先生の「刑法各論講義」(成文堂)が詳しくて理論的にも分かりやすく、オススメします。なお、川端博先生の「刑法講義総論」(成文堂)もあり、こちらも総論の教科書の中では悪くないと思います。個人的には、行為無価値であれば、斎藤信治先生の「刑法総論」、「刑法各論」(有斐閣)が面白くて大好きです。「社会心理的衝撃性」という新たな概念を用いておられ、ちょっと通説と異なる立場ですけどね。他には、井田良先生の基本書が最近人気みたいですが、こちらは通読していないので、何とも言えません。

結果無価値の人は、山口厚先生の「刑法総論」、「刑法各論」(有斐閣)を外せないのではないでしょうか。ただ、刑法総論はかなり難しく感じると思います。あと、松宮孝明先生の「刑法総論講義」、「刑法各論講義」(成文堂)も難解ですが、読んでいて面白いですね。しかし、司法試験向きとは言えないかもしれませんが。残すは、最近メジャーな西田典之先生の「刑法総論」、「刑法各論」(弘文堂)となるんでしょうが、実は私、この本を通読していないので何とも言えません。というわけで、結果無価値の基本書では、これといった決め手をご紹介することが今のところできません。ごめんなさい_| ̄|○

行為無価値であろうが、結果無価値であろうが、論文対策が重要なのは間違いなく、どの学説に立ったからといって点差が出るようなことはないと思います。ロースクールの先生の学説に近い本を選んでおけば間違いないし、混乱もしないのではと思います。

注意すべきは、いろんな基本書をつまみ食い的に利用することですね。これはタブーです。刑法(特に総論)は論理的思考が最も問われる法律科目ですので、一貫した記述をすることが必要です。いろんな学説をごちゃ混ぜにしないよう気をつけましょう。

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2011年11月5日 | コメント/トラックバック(0) |

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民法のオススメ本

久々に司法試験、国家公務員試験受験生向けに民法のオススメ基本書を紹介します。あくまで私の独断ですが。

今のところ、最メジャーなのは、いわゆる内田民法シリーズでしょう。僕が受験生のときから大人気で、判例の事案ベースの事例を引用しながら書いてあって、まさに教科書という感じです。ですが、個人的には好きになれませんでした。論文書くときに、論証へ転化しにくい感があって…。
で、そんな私は受験生時に、新世社から出てる平野裕之先生の「基礎コース民法」をけっこう使ってましたね。某掲示板で、この本が一時的にもてはやされてました。でも、実はこの本は読みにくいです。内容よりも筆者の文章に慣れるまでに時間かかりますので、ちょっとオススメできません。分量は適度で、内容はいいんですけど。

そんな私の現時点でのイチオシは、単一著者シリーズなら川井健先生の民法概論シリーズです。我妻先生のお弟子さんで、オーソドックスな学説を展開されてます。文章も単調ですが、読みやすいです。公務員受験生にとっては、やや細かすぎるかもしれませんけど。
他にも近江先生の民法講義シリーズ(成文堂)とか大村先生の基本民法シリーズ(有斐閣)などたくさんありますが、通読してないので、評価できず。

まぁ、民法も他の科目と同様に知識を入れたら、ひたすら問題演習するのが重要ですね。そういうことで、基本書は自分にあったものであれば何でもいいと思います。こういうと、元も子もないですけど(笑)
なお、上記の紹介はあくまで単一著者によるシリーズ物(完結しているものに限る)に限定しています。優れた基本書はたくさんありますが、全て読んでませんし、紹介する余裕がないんで。またの機会に、分野ごとで紹介できればと思います(^_^)


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2011年10月13日 | コメント/トラックバック(0) |

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資格試験、公務員試験の勉強法(続き)

先日、資格試験等の勉強法について私なりに思うところを書きました(前回の記事:資格試験、公務員試験等の勉強法)。勉強法といっても、人それぞれ置かれている状況が違いますし、性格も異なるわけですので、僕のオススメする勉強法が万人にうけるとは思ってません。
でも、やっぱり多くの人にとって役に立つんじゃないかとも思ったり‥。

今日は、前回の記事にちょっと補足しておきたいと思います。
資格試験、公務員試験は択一式(多肢選択式)と論文式があります。このうち択一式試験に合格するには、択一過去問をひたすら繰り返して正答率をあげることで大丈夫であることは前回の通りです。ほかに必要なことは、本番さながらの実践感覚を養うために予備校の模擬試験を何度か受験すればよいと思います。強制的に時間内で解くことになる点で模試は有用でしょう。ただし、模擬試験はオリジナルな問題を組み込みますので、時折マニアックな問題が含まれてます。そういう問題については、間違えても気にしないことが必要です。せっかく模試を受けたわけですから、復習くらいはすべきでしょうけど。ほかには、法律択一試験であれば、最新判例をチェックすれば十分かと。

他方で論文式試験、とりわけ法律論文試験については、過去問と同じテキストをひたすら繰り返すことが効果的であることは前回の通りですが、注意しないといけないのは、ダラダラとやらないことです。論文式試験では、真っ白な答案に一から書き起こしていくわけですから、暗記のレベルは、見て思い出せば足りるレベルの択一式とは異なり、正確に書けるレベルじゃないといけません。でも、法律は覚えるべき分量が膨大で、テキストを一周する頃には最初にやったことを忘れてるなんてことがよくあります。これをできるだけ防いで、知識を確実に暗記するには、テキストの回転速度をひたすら上げるのがいいかと思います。1ヶ月で同じテキストをみっちり1回やるよりは、3回ざっくりと繰り返す方が知識は定着するはずです。
それから、テキストを読むときには、常に論文で出題されたら、どう書くかという点を意識することが大事だと思います。この読み方だと読むスピードはダウンしますが、繰り返せば次第に速度はあがります。

以上、接見に向かう途中の電車内で書いてみました。読み返してみると、昔の自分に言い聞かせているようで、若干恥ずかしくなってきますね(; ̄O ̄)私、受験生時にはいろんなテキストを読みあさって、いろんな問題を解いてみて、結局わかった気になってただけでしたから‥。不確実な知識しか身についておらず、論文式試験どころか、択一式試験でも大苦戦でした。

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2011年9月25日 | コメント/トラックバック(0) |

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憲法

芦部信喜著「憲法」表紙 実務についてからはほとんど憲法、行政法をやる機会がない。

でも、僕は時折り、憲法の基本書を読み直してます。
司法試験に受かってから、それまで読んだことがない本にも何冊か目を通したけど、ダントツ分かりやすくてオススメなのは、芦部先生の「憲法」(岩波書店)ですね。これは、長年、多くの人の間で読み継がれているだけのことはあります。司法試験、国家公務員試験、地方公務員試験を問わず、マスターすべきです。
松井先生の「日本国憲法」(有斐閣)も分かりやすいんですが、プロセス的憲法観に立たれていて、少数説であることを念頭において読むのがいいです。

ちなみに、最近、成文堂から発売された佐藤幸治先生の「日本国憲法論」は、噂通り、表現の難しい記載がいくつかあり、初学者は避けた方が無難ですね。

あえて芦部憲法のサブテキストとして勧めるなら、有斐閣アルマの憲法ですかね。けっこう丁寧な内容で、もっと売れてもいい気がします。


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2011年9月11日 | コメント/トラックバック(0) |

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