立ちションで軽犯罪法違反?
久々に法律問題について書いてみたいと思います。
今日もなんだかんだで仕事したなーと思って、一息つこうとしてネットニュースを見たら、興味深い記事が目にとまりました。
テナントビルの駐輪場で立ちションした行為について軽犯罪法違反に問われた事案について、第一審は無罪としたものの、控訴審の大阪高裁は有罪(科料9900円)判決を下したとのことでした。
詳しい事実関係を把握していないので明言しにくいのですが、あえて人の目につくような方法・場所で堂々と立ちションしていた場合には公然わいせつ罪(刑法174条)の適用も問題になるところ、上記事案は駐輪場でこっそりとやっていたので、軽犯罪法の適用のみ問題になったのかなと推測しています。
女性の立ちションは考え難いので(ですよね?)、今回はもっぱら男性に向けての話になります。酔っ払ってトイレに行きたくなったけど、近くにトイレがないので、お酒の勢いもあって立ちションしたという男性は実はけっこういるのではないでしょうか(社会人になると「恥ずかしい」、「みっともない」という至極もっともな感情により、シラフで立ちションする人は少ないと思います。)
で、ここから本題ですが、上記の事件で問題となっている軽犯罪法は合計で4条しかない法律ですが、その第1条において、「拘留又は科料」の対象となる犯罪について1号から34号まで規定しています。よくよく条文を読んでみると、いろんな行為がけっこう細かく規定されていることに驚きます。
(話が少し脱線しますが、「科料」とは「1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する財産刑」です。「罰金」も同様の財産刑ですが「1万円以上」という点で「科料」と異なります。また、「拘留」とは「1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する自由刑」です。)
例えば、「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」(第1条4号)、「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」(第1条5号)、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」(第1条20号)も軽犯罪法違反となって拘留又は科料に処される可能性があるわけですね。最後の行為については、「しり」を露出させることはさておき、「もも」の露出も駄目なのか?と思ったりします。とはいっても、「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」での露出に限定されていますので(一体どういう仕方なのか気になりますね)、処罰の対象になる露出は相当限定されるわけでして、日常で行動する際にそんなに気にする必要はないでしょう。
さて、立ちションについてですが、第1条26号は「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」と規定しており、上記事案はまさにこの条文の適用が問題になったようです。
立ちションした場所がテナントビルの駐輪場だったとのことですが、その駐輪場が「公衆の集合する場所」にあたるかどうかが問題になったところ、第一審も控訴審も駐輪場の狭さ等から「公衆の集合する場所にあたらない」と判断したようです。
そうすると、無罪という結論になりそうなのですが、控訴審は「(今回の裁判で問題となっている)駐輪場は歩道に面していて段差もないので『街路』にあたる」と結論づけ、有罪という判決に至ったようです。
いずれにせよ、立ちションは当然として、たんつばを吐く行為も軽犯罪法に触れる可能性があるということを覚えておいた方がよいと思います。
また、軽犯罪法の第3条は「第1条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。」と規定しており、例えば、他人に街路・公園等の場所で立ちションするように唆したり、その立ちションを手助けすることも処罰の対象になりうることを知っておくべきですね(そんなことする人はレアだと思いますが)。
ちなみに、軽犯罪法違反で逮捕されたという話を私はあまり聞いたことがありません。おそらく、軽犯罪法第4条が「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定しているためだと思います。
2017年2月8日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:法律学